SQLAlchemyはPythonのデータベース操作を強力に支援してくれるライブラリですが、mypyなどの型チェックツールと組み合わせると問題が発生することがあります。この記事では、特にselect.where句で型エラーが発生するケースについて、再現例と解決策を詳しく紹介します。最近この現象でドハマリしたので備忘録です。
環境
- sqlalchemy>=2.0.36
- mypy>=1.5.1
再現例と解決策
再現例: mypyによる型チェックエラー
以下のコードを例に取ります。このコードは、Userテーブルから特定のuser_idに一致するレコードを取得するシンプルなクエリを実行します。
from sqlalchemy.ext.asyncio import AsyncSession
from sqlalchemy.future import select
# Userモデルは適切に定義されていると仮定
result = await session.execute(
select(User).where(User.id == user_id)
)
このコードをmypyでチェックすると、以下のようなエラーが発生することがあります。
error: Unsupported left operand type for == ("Column[Any]")
このエラーは、SQLAlchemyの比較演算子(==)が返す型をmypyが正確に理解できないために起こります。
解決策
型エラーを解消するためのアプローチを以下に整理しました。
1. mypyの設定
mypyがSQLAlchemyの型ヒントを正しく扱えるようにするため、次の設定をmypy.iniまたはpyproject.tomlに追加してください。
mypy.ini の例
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pyproject.toml の例
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これにより、SQLAlchemyの型情報が正しく認識され、型チェックが強化されます。
2. filter_byの使用
SQLAlchemyにはfilter_byメソッドが用意されており、シンプルな等価比較に適しています。この方法では型エラーが発生しません。
書き換え例
result = await session.execute(
select(User).filter_by(id=user_id)
)
注意点
filter_byには以下の制限があります:
- 等価比較(==)のみ対応
- 複雑な条件(ORやANDなど)は使用できない
- カラム名を文字列として扱うため、静的解析では限定的なサポート
そのため、複雑な条件が必要な場合にはwhere句を使用する必要があります。
3. 型キャストを使用する
where句を使用しながら、mypyの型エラーを回避する方法として、castを使った型キャストがあります。
書き換え例
from typing import cast
from sqlalchemy.sql.elements import BinaryExpression
condition = cast(BinaryExpression, User.id == user_id)
result = await session.execute(
select(User).where(condition)
)
メリット
- 型安全性を保ちながらmypyエラーを解消できる
- 複雑な条件にも対応可能
4. # type: ignore
コメントを使用
どうしても型エラーを解決できない場合は、 # type: ignore
を使って特定の行での型チェックを無効化します。
書き換え例
result = await session.execute(
select(User).where(User.id == user_id) # type: ignore[operator]
)
注意点
# type: ignore
は乱用せず、他の解決策が使えない場合のみに限定する- 型チェックが無効化されるため、安全性が低下する可能性がある
実践例
以下に、複雑な条件を扱う場合の実践例を示します。
条件: 年齢が30以上かつ特定の名前を持つユーザーを取得
型キャストを使用
from sqlalchemy import and_
from typing import cast
from sqlalchemy.sql.elements import BinaryExpression
condition = cast(BinaryExpression, and_(User.age >= 30, User.name == "Alice"))
result = await session.execute(
select(User).where(condition)
)
このような複雑な条件は filter_by
ではサポートされていません。
sqlalchemy-stubs
ネットを調べてこの問題の解決策として sqlalchemy-stubs
を使えとの情報にたどり着いたのですが、SQLAlchemy 2.0の登場以降は推奨されていません。
結論
SQLAlchemyとmypyの相性には課題がありますが、まず filter_by
使ってそれがだめなときはこまめに型キャストするか面倒なら # type: ignore
を使うことになるでしょう。この記事が型チェックエラーの解決に役立てば幸いです!
参考文献