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Dec 8, 2025 - 日記

Parallax:分散AIクラスター新星、exoとの違いとは?

parallax-vs-exo cover image

2025年10月にProduct Huntで1位を獲得したParallax が、分散AIクラスター界隈で注目を集めています。以前当ブログで紹介したexo と同じコンセプトを持ちながら、異なるアプローチを取っているこのツールについて、両者の違いを中心に紹介します。

Parallaxとは?

Parallax は、Gradient Network が開発している分散型推論エンジンです。家庭にある複数のデバイスをAIクラスターとして統合し、単体では動作できない大規模モデルを動かせるようにします。

主な特徴:

  • 完全な分散アーキテクチャ: マスター・ワーカー構成ではなくP2P接続
  • パイプライン並列モデルシャーディング: モデルを自動分割
  • クロスプラットフォーム対応: Mac、Linux、GPUデバイスで動作
  • 動的リクエストスケジューリング: 高性能な推論を実現

技術スタック:

exoとの比較

2つのツールは同じ目的を持ちますが、アプローチに違いがあります。

共通点

  1. 分散推論の実現: 複数デバイスでモデルを分割実行
  2. 自動デバイス発見: ネットワーク上のノードを自動検出
  3. ChatGPT互換API: OpenAI API互換のエンドポイント提供
  4. クロスプラットフォーム: Mac、Linux対応
  5. P2P構成: 中央サーバー不要の分散構成

主な違い

1. 推論エンジンの選択肢

exo:

  • MLX(Mac向け)
  • tinygrad(GPU向け)
  • PyTorch(開発中)
  • llama.cpp(計画中)

Parallax:

  • SGLang(GPU向け)
  • MLX LM(Mac向け)

exoの方が推論エンジンの選択肢が豊富です。特にtinygradは軽量で柔軟性が高く、様々な環境で動作します。

2. ライセンス

  • exo: GPLv3(コピーレフト型)
  • Parallax: Apache 2.0(パーミッシブ型)

Parallaxは商用利用により適したライセンスを採用しています。

3. サポートモデル

exo:

  • LLaMA、Mistral、LLaVA、Qwen、DeepSeekなど幅広く対応

Parallax:

  • DeepSeek V3.1、R1
  • MiniMax-M2
  • GLM-4.6(Kimi)
  • Qwen3-Next、Qwen3、Qwen2.5
  • gpt-oss(OpenAIのオープンウェイト版)
  • Meta Llama 3シリーズ

Parallaxは企業パートナーシップにより、最新モデル(DeepSeek R1、gpt-ossなど)への対応が迅速です。特にQwenSGLangKimiMiniMaxZ AI とのパートナーシップが公式サイトで明示されています。

4. KVキャッシュ管理

  • exo: 基本的なKVキャッシュ実装
  • Parallax: Mac向けに動的KVキャッシュ管理+継続バッチング

Parallaxはメモリ効率と推論速度の最適化により注力しています。

5. コミュニティとエコシステム

exo(2024年9月リリース):

  • GitHub Stars: 32.7k
  • Forks: 2.2k
  • Contributors: 51人
  • より実験的で草の根コミュニティ主導

Parallax(2025年10月リリース):

  • GitHub Stars: 964
  • Forks: 95
  • Contributors: 18人
  • 企業主導で戦略的パートナーシップ重視

exoの方がコミュニティ規模は大きいですが、2025年3月以降は開発ペースが落ち着いています。

exoのその後

当ブログでexoを紹介 してから約1年が経ちました。その間の主な進展:

  1. 安定性の向上: 初期の接続不安定性が大幅に改善(2025年2月頃)
  2. モデル対応拡大: DeepSeek V3、Qwen3など最新モデル追加
  3. パフォーマンス改善: メモリ管理とレイヤー分割の最適化
  4. grpcライブラリの更新: 通信ライブラリの継続的なメンテナンス

最新バージョンはv0.0.15-alpha(2025年3月1日リリース)です。2025年3月以降は開発ペースが緩やかになっており、最後のコミットは2025年10月30日です。Issue数(378件)やPR数(75件)を見ると、コミュニティからの要望は多いものの、メンテナンス体制が追いついていない印象です。

どちらを選ぶべきか?

exoが向いているケース

  • 実験的な環境で様々な推論エンジンを試したい
  • 草の根コミュニティの活発な開発に参加したい
  • tinygrad、llama.cppなど特定のエンジンを使いたい
  • GPLv3ライセンスで問題ない

Parallaxが向いているケース

  • 最新の企業向けモデル(DeepSeek R1、gpt-ossなど)をすぐに使いたい
  • 商用利用を視野に入れている(Apache 2.0)
  • SGLang、MLX LMの最適化された実装を活用したい
  • 企業のサポート体制を重視する

まとめ

Parallaxとexoはどちらも「家庭内デバイスで分散AIクラスター」という革新的なコンセプトを実現していますが、アプローチが異なります。

exoは多様な推論エンジンと活発なコミュニティを武器に、実験的で柔軟な環境を提供します。一方Parallaxは、企業パートナーシップと最適化されたバックエンドにより、最新モデルへの迅速な対応と商用利用適性を強みとしています。

個人的には、両方試して比較するのが最も有益だと思います。どちらもインストールが簡単で、セットアップの手間はほとんどかかりません。使用感の違いを実際に体験することで、自分のユースケースに最適なツールが見つかるでしょう。

興味のある方はぜひ試してみてください。

参考リンク