
Google Analytics のデータ分析、普段どのように行っていますか?Web UIでの操作も便利ですが、LLM(大規模言語モデル)を使って自然言語でデータを問い合わせできたら、さらに効率的になるかもしれません。
Google から公式に提供されている Google Analytics MCP Server を使えば、この課題を解決できます。Claude Code から直接 Google Analytics 4(GA4)のデータにアクセスできるようになります。この記事では、その導入方法と基本的な使い方について解説します。
Google Analytics MCP Server とは
Google Analytics MCP Server は、MCP(Model Context Protocol)に対応した、Google Analytics にアクセスするためのサーバーです。これにより、LLM を搭載したツールから Google Analytics のデータを取得・分析できるようになります。
詳細は公式GitHubリポジトリ を参照してください。
主な機能
このサーバーは、以下の2つの Google Analytics API を利用します:
- Google Analytics Admin API - アカウントやプロパティの情報取得
- Google Analytics Data API - レポートデータの取得
具体的には、次のような操作が可能です:
アカウント・プロパティ情報の取得
get_account_summaries: Google Analytics アカウントとプロパティの一覧取得get_property_details: 特定プロパティの詳細情報取得list_google_ads_links: Google Ads との連携情報取得
レポートの実行
run_report: データ API を使ったレポート実行get_custom_dimensions_and_metrics: カスタムディメンションとメトリクスの取得
リアルタイムレポート
run_realtime_report: リアルタイムデータの取得
セットアップ手順
セットアップは以下の3つのステップで行います:
- Python 環境の準備
- Google Analytics API の認証設定
- Claude Code または Gemini CLI の設定
1. Python 環境の準備
まず、pipx をインストールします。pipx は Python アプリケーションを隔離された環境で実行するためのツールです。
macOS の場合:
brew install pipx
pipx ensurepath
2. Google Analytics API の認証設定
前提条件: gcloud CLI がインストールされていること
API の有効化
Google Cloud プロジェクトで以下の2つの API を有効にする必要があります。
手順:
- Google Cloud Console にアクセス
- 画面上部のプロジェクト選択ドロップダウンから、対象のプロジェクトを選択(プロジェクトがない場合は新規作成)
- 左側のメニューから「APIとサービス」→「ライブラリ」を選択
- 検索ボックスで以下のAPIを検索し、それぞれ有効化:
- 各APIページで「有効にする」ボタンをクリック
有効化には数分かかる場合があります。「APIとサービス」→「有効なAPIとサービス」で有効化されたことを確認できます。
認証情報の設定(OAuth クライアントの作成)
Google Analytics API にアクセスするには、OAuth 2.0 クライアント ID を作成する必要があります。この手順が最も重要で、少し複雑ですが、以下の手順に従えば問題ありません。
1. OAuth 同意画面の設定
初めて OAuth クライアントを作成する場合、まず同意画面を設定する必要があります。
- Google Cloud Console の「APIとサービス」→「OAuth 同意画面」を選択
- User Type で「外部」を選択し、「作成」をクリック
- アプリ情報を入力:
- アプリ名: 任意の名前(例:「GA MCP Client」)
- ユーザーサポートメール: 自分のメールアドレス
- デベロッパーの連絡先情報: 自分のメールアドレス
- 「保存して次へ」をクリック
- スコープ画面では何も追加せず「保存して次へ」
- テストユーザー画面で「+ ADD USERS」をクリックし、自分のGoogleアカウント(Google Analytics にアクセスできるアカウント)を追加
- 「保存して次へ」→「ダッシュボードに戻る」
2. OAuth クライアント ID の作成
- 「APIとサービス」→「認証情報」を選択
- 画面上部の「+ 認証情報を作成」→「OAuth クライアント ID」を選択
- アプリケーションの種類で「デスクトップアプリ」を選択
- 名前を入力(例:「GA MCP Desktop Client」)
- 「作成」をクリック
- 表示されたダイアログで「JSON をダウンロード」をクリック
- ダウンロードした JSON ファイルを安全な場所に保存(例:
~/credentials/ga-oauth-client.json)
重要: このJSONファイルには機密情報が含まれているため、Git リポジトリにコミットしないよう注意してください。
3. 必要なスコープ
このセットアップで使用するスコープは以下の通りです:
https://www.googleapis.com/auth/analytics.readonly
https://www.googleapis.com/auth/cloud-platform
これらのスコープは、次の gcloud コマンド実行時に指定します。
gcloud コマンドによる認証
OAuth クライアントの JSON ファイルをダウンロード後、以下のコマンドで認証します:
gcloud auth application-default login \
--scopes https://www.googleapis.com/auth/analytics.readonly,https://www.googleapis.com/auth/cloud-platform \
--client-id-file=YOUR_CLIENT_JSON_FILE
YOUR_CLIENT_JSON_FILE は、ダウンロードした OAuth クライアント JSON ファイルのパスに置き換えてください。
コマンド実行後、以下のようなメッセージが表示されます:
Credentials saved to file: [PATH_TO_CREDENTIALS_JSON]
この PATH_TO_CREDENTIALS_JSON のパスを次のステップで使用するので、コピーしておいてください。
サービスアカウントの偽装を使う場合は、以下のコマンドを使用します:
gcloud auth application-default login \
--impersonate-service-account=SERVICE_ACCOUNT_EMAIL \
--scopes=https://www.googleapis.com/auth/analytics.readonly,https://www.googleapis.com/auth/cloud-platform
3. Claude Code の設定
Claude Code
では、~/.claude.json ファイルに MCP サーバーの設定を追加します。
Note: Gemini CLI でも同様に
~/.gemini/settings.jsonに設定を追加することで利用できます。詳細は公式ドキュメント を参照してください。
{
"mcpServers": {
"analytics-mcp": {
"command": "pipx",
"args": [
"run",
"analytics-mcp"
],
"env": {
"GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALS": "PATH_TO_CREDENTIALS_JSON",
"GOOGLE_PROJECT_ID": "YOUR_PROJECT_ID"
}
}
}
}
設定のポイント:
PATH_TO_CREDENTIALS_JSON: 前のステップでコピーした認証情報ファイルのパスに置き換えますYOUR_PROJECT_ID: Google Cloud プロジェクトのプロジェクト ID に置き換えます
実際の使い方
セットアップが完了したら、Claude Code を起動して試してみましょう。
サーバーの確認
まず、MCP サーバーが正しく認識されているか確認します:
/mcp
analytics-mcp がリスト表示されていれば成功です。
サンプルプロンプト
以下は、Google Analytics MCP Server で試せる実用的なプロンプトの例です。自然な日本語で質問できます。
サーバーの機能確認
analytics-mcp サーバーで何ができますか?
アカウント・プロパティ情報の取得
Google Analyticsのアカウント一覧を教えて
名前に「blog」を含むプロパティの詳細情報を表示して
プロパティ ID 258570598 の設定を確認したい
トラフィック分析
過去30日間のページビュー数とユーザー数を教えて
先週最もアクセスが多かったページトップ10を表示して
過去7日間の日別アクティブユーザー数の推移を見たい
イベント分析
過去90日間で最も発生頻度の高いイベントを教えて
「購入完了」イベントの発生回数を月別に集計して
昨日のコンバージョンイベント数を確認したい
ユーザー行動の分析
過去30日間のユーザーの流入経路(参照元/メディア)を分析して
モバイルとデスクトップのユーザー比率を教えて
新規ユーザーとリピーターの割合を過去3ヶ月分で比較して
リアルタイムデータの確認
現在のアクティブユーザー数を教えて
今見られているページトップ5を表示して
リアルタイムでどの国からアクセスがあるか確認したい
カスタム設定の確認
このプロパティに設定されているカスタムディメンションとカスタムメトリクスを一覧表示して
Google Ads との連携状況を確認したい
比較・分析
今月と先月のページビュー数を比較して
過去1年間で最もトラフィックが多かった月を教えて
特定のページ(/about)の過去30日間のアクセス推移を見たい
まとめ
Google Analytics MCP Server を使うことで、Claude Code から自然言語で Google Analytics のデータを分析できるようになります。レポートの作成やデータの確認が、コードを書くことなく会話形式で行えるのは非常に便利です。
特に、定期的なデータ確認やアドホックな分析を行う際に、この仕組みは威力を発揮します。Web UI を開いてフィルターを設定する代わりに、質問を投げるだけでデータが取得できるのは、作業効率の大幅な向上につながるでしょう。
興味のある方は、ぜひ公式のチュートリアル動画(Google Analytics MCP Setup Tutorial )も参照してみてください。実際のセットアップの様子を確認できます。